3端子レギュレータの利用経験
デジタル屏風では、電池起動で利用できる監視警報装置を開発しています。先日監視警報装置の開発環境において、供給電源の電圧がPICマイコンの最大値を超えたため、PICマイコンのEUSARTが正しく動作せず、多大な時間を費やしてしまいました。このため電源供給に関するトラブルをなくすために、3端子レギュレータの使い方について改めておさらいします。
◆3端子レギュレータの役割
デジタル屏風が開発している監視警報装置は、電源として単三電池x4本を使っています。電池は使用していくうちに電圧が降下していきます。必要な電力が供給できなくなると交換が必要となります。電池の消費電流については、使用する電流にも影響されますが、おおざっぱに言って単三電池で2500mAhと言われています。パナソニック社の電池について、パナソニック社のホームページでは、放電終止電圧として0.9Vという値が示されています。筆者が新品の電池の電圧をテスターを使って測ったところ、1.6Vでした。これは新品の電池に交換してから使用できなくなるまで、提供電力が1.6Vから0.9Vへ徐々に下がっていくということです。このような電池の電圧をそのまま使うと監視警報装置の中で動作しているPICマイコンに安定した電力を供給できません。安定した電力を供給するために3端子レギュレータを使用しています。
◆3端子レギュレータTA78L05Sの仕様
監視警報装置内で動作しているPICマイコンおよび音声合成LSIは5Vで動作するため、5Vで安定した電源を供給できるように、TA78L05S(東芝製、秋月電子で1個20円)を使用しました。この3端子レギュレータは、データシートに記載されている通り入力電圧35V以下で、出力電圧は最小4.8V、最大5.2Vの電圧を出力します。TA78L05Sの3つのピンの接続方は以下のようになっています。
◆コンデンサーの接続
TA78L05Sのデータシートには、3端子レギュレータの発振を抑止するため、コンデンサを接続することが必要としています。応用回路例として以下のようなコンデンサの接続が紹介されています。データシートのこの図も他の技術文献の多くの接続図も左がINで右がOUTとなっています。TA78L05Sの表示面に向かってのINとOUTの関係と逆になっているので注意が必要です。
◆ダイオードの接続
「逆引きPIC電子工作やりたいこと事典」(後閑哲也著)では、「電源オフ時の逆電圧でレギュレータが壊れるのを防止するため、ダイオードを付加することがあります」と記されています。データシート中の応用回路例にも記されていますが、OUTからINへの単方向の電流が流れるパスを用意することが好ましいようです。
◆3端子レギュレータの放熱
「電子工作入門以前」(後閑哲也著)では、3端子レギュレータが「((入力電圧)ー(出力電圧))x(出力電流)の熱を発生します」と記されています。そしてこの熱が出力電流に影響を及ぼすことが記されています。本著で紹介されている3端子レギュレータでは、放熱器を取り付ける対処が記されています。しかしTA78L05Sには放熱器をつけるような仕組みもないので、少量の電流が流れるのであれば不要ではないか、と考えました。それと入力電圧を出力電圧にできるだけ近づければ発熱量を減らすことができるだろうと考えました。
◆入力電力と出力電力の関係
TA78L05Sのデータシートには、入力電力に対する出力電力を示したグラフが示されています。入力電力が6.5V以上であれば、5Vの電力を安定して出力するようです。しかし入力電力が6.5Vを下回ると出力電力は一定の割合で落ちていきます。入力電力が5Vだと出力電力が約3V、入力電力が4Vだと出力電力が2V、入力電力が未満だと出力電力が0Vとなってしまいます。単三4本を電源とした場合、購入したばかりの電池の電圧が1.6Vとして、4本だと1.6Vx4本で6.4Vなので、3端子レギュレータの出力はどんどん下がっていってしまうということでしょう。一般的な放電終止電圧である0.9Vになる前にその電池が使えなくなってしまうのが懸念されます。