3Dプリンタ da Vinch 1.0 Pro利用経験
デジタル屏風では、屋外で利用できる監視警報装置を開発しています。
◆da Vinch 1.0 Proの購入
製品開発では、3Dプリンタを使って筐体などを製作しています。これまではFlashforgeのFinderを使っていました。
しかしテフロンチューブの交換を行ったところ、ノズルの温度を表示しなくなってしまったので、この機会に新しい3Dプリンターda Vinch 1.0 Pro(XYZプリンティング社製)を新規購入しました。Amazonで約8万円でした。今まで使っていたFlashforgeのFinderでは最大製作サイズが1辺が15cmの立方体でしたが、da Vinch 1.0 Proでは一辺が20cmの立方体まで製作することができるのです。また、「3DプリンタとCADの始め方」(岩永翔伍著)で、XYZプリンティング社が出荷台数でシェアトップであると紹介されているので、安心して使えるのではと考えました。
◆da Vinch 1.0 Proの特徴
●サイズの大きい製作物ができる
最大1辺が20cmの立方体までというのは大きな特徴です。本体のサイズも1辺が60cmくらいあり、重量も約20kgとかなり大きいです。
●プレートが加熱される、フィラメントにABSを利用できる
アルミ製のプレートが加熱されます。3Dプリンタの主要なフィラメントにはPLAとABSの2種類がありますが、ABSを利用する場合プレートの加熱が必要となります。da Vinch 1.0 ProではABSで製作ができるように、プレートの加熱機能を有しているのです。筆者は今までPLAを使ったことしかありませんでしたが、da Vinch製品に添付されていたABSフィラメントを初めて使って色々な問題にぶつかりましたので別に体験談として記述します。
●フィラメントのきめ細かい管理
da Vinch製品では、使用するフィラメントにXYZプリンティング社の製品を使うことを強く推奨しており、他社のフィラメントを使った場合には動作保証しないと説明書に記されています。筆者の認識では市場に流通している一般のフィラメントよりやや高価になっています。市場に出回っているフィラメントの品質も色々でしょうから、ここは多少価格が高くても安心を選ぶということで納得しました。フィラメントカートリッジからノズルにフィラメントを送り出す仕組みもしっかりしています。フィラメントの残量をICチップで管理しており、印刷開始前に印刷に必要となるフィラメントの量とリールにまかれたフィラメントの量を比較し、残量不足のときには印刷できない仕組みを有しています。
●水平出しが楽
3Dプリンターを使う上でハードルとなるのがプレートの水平出しです。da Vinvh製品では、各ねじについてあと何回転回せば水平になるのかがディスプレイに表示されるので、水平出しが容易に正確にできるのです。
●ノズルクリーニングが簡単
3Dプリンタを使う上でもう一つのハードルはノズル他のクリーニングです。da Vinch製品では、ノズル部分の取り外しからクリーニングワイヤを使った作業が簡単にできます。
説明書では25時間印刷するごとに掃除が必要であると書かれています。頻繁に掃除を行うことになりますが、25時間という明確な数値が示されたことで安心して使うことができます。実際に掃除をしてみると、下の写真のように長さ10cmくらいの糸状になってゴミが出てきます。
◆da Vinch 1.0 Proで初めて印刷が成功するまで
da Vinvh製品で監視警報装置の筐体を作成するまでのさまざまな経験を書きます。
●ラフトがうまく作れない
監視警報装置の筐体はおおよそ円筒形でプレートとの接触面積は小さいので、Flashforgeの3Dプリンタを使うときは必ずラフトが必要でした。今回da Vinch製品に添付されていたABSフィラメントとラフトがうまく機能しなかったという結論です。
XYZPrintユーティリティを使う場合ラフトには格子とグリッドの2種類があります。
格子を試したところ、格子はほぼプレート上に乗りましたが、一部はずれる部分がありました。
グリッドを試しましたが、こちらもNGでした。グリッドのラフトが滑りやすく、製作物かうまく乗っていないように見えました。
次にラフトなしでやってみると、製作物が滑ってしまいうまくできませんでした。
XYZプリンティング社のホームページのFAQを参照するとプレートに糊を塗るという対策が記述されていたのでこれをやってみました。
糊を塗ったらラフトなしでも印刷物が固定されるようになりました。しかし底面から上に上がった部分ですきまができてしまい、失敗です。
●フィラメントをABSからPLAに変更して成功、印刷時間は10時間
製作物の上の方で隙間ができていることから、プレートは温度が高くなっているけど、上に行くに従って温度が届かなくなるから失敗しているのではないかと考え、プレートを温めなくても済むPLAを購入し試しました。成功しました。結局フィラメントをPLAにすること、ラフトなしにすること、プレートに糊をぬることがポイントでした。
da Vinch製品での印刷時間は約10時間。印刷パラメータは、変更する理由がなかったので既定値のままで実行しました。Flashforgeでは筆者の経験から「より精密に」というパラメータで印刷していましたが、18時間かかりました。時間は大きく短縮されています。
●より滑らかな製作物の表面
同じstlファイルを使って製作した場合でも、flashforgeとda Vinch製品では製作物の表面に違いがありました。下の写真で左がFlashforgeで製作したもの、右がda Vinch製品で製作したものです。da Vinch製品での製作の方がより滑らかな表面になっています。
◆da Vinch 1.0 Proでフィラメントを交換する
da Vinch製品では、XYZ社フィラメントを購入し、交換することができます。交換の手順は購入したフィラメントのパッケージの中に記載されていました。
ICチップも新しいものに差し替えます。
◆da Vinch 1.0 Proでプレートシートを交換する
da Vinch製品でプレートシートに糊をつけると、製作物を取り出すときにプレートシートを破損することがあります。
そのため筆者はプレートシート用のテープを購入し使いました。
プレート全体を覆うためにはカットしたテープを3枚張る必要があります。テープ同士が重なる部分がフィラメント吐出の都合で悪影響を及ぼさないか懸念したしたが、いまのところ問題はありません。